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SCM方法論としてのSCORモデル
=SCC/SCORワークショップより=
ERP研究推進フォーラム主幹研究員 梅澤伊憲
本稿は、SCMリサーチレビューVOL.6(2000年冬号)に掲載した「SCORによるSCM革新方法論とビジネスプロセス評価」を改題・再編集して掲載する。ビジネスプロセス・アプローチの視点からのSCM(サプライチェーン・マネジメント)の捉え方と、シカゴでのSCC Chief Technology Officer/Scott Stephens氏によるSCORワークショップから得た方法論としてのSCORモデルのポイントを解説して考察を加え、その後の若干の応用イメージを記述したものである。
2001年8月 梅澤記
SCOR(サプライチェーン運営参照モデル)を単なるビジネスプロセスモデル、あるいはその記述言語と捉えると評価を間違える。ビジネスプロセスの性能評価、ベンチマーキングを含めた測定と診断、ソリューションとの関連付け等を狙った、サプライチェーンマネジメント変革の方法論としての側面をキチンと見据えなければならない。SCC(サプライチェーン協議会)も、SCOR方法論(Methodology)のワークショップの開催や、グローバルな第3者アライアンスの形成によるベンチマーキングの推進等、SCM実践活動を本格化させてきた。方法論としての側面を強調しだしたのである。
日本でも、1年半におよぶSCM研究プロジェクトでの研究活動と、この間を通したSCCおよびSCORの紹介活動を経て、SCCへの日本企業の参加、日本支部の設立、幾つかの企業や団体によるSCORの実践適用、グローバルなベンチマーキングへの参画等が始まっている。
そのような状況を踏まえて、本特集の主題である「ビジネスプロセスの性能評価」の面でのSCOR方法論の実際と有効性を検証してみたい。更に、日本だけでなく、米国でも課題としてクローズアップされてきている幾つかの点を取り上げて、今後のSCOR方法論および標準としての運用の望ましい姿を展望する。
1.ビジネスプロセスアプローチ
[図表.1]企業システムの革新活動

(c) Copyright 1997. All rights are reserved by Korenori Umezawa@ERP forum
Japan
図表1は、1998年にERP研究推進フォーラムから刊行した「ERP導入マネジメント」編集委員会での討議の中から形になった、企業システムの全体像とその革新の関連を表わす概念図である。企業システムを「企業基盤層=企業が置かれている環境要件を含む事業の実態」、「ビジネスプロセス層=それらを運営し事業目標を実現するための企業内業務や企業間取引」および「情報システム層=その業務や取引を支援する情報システム」の3層で表現している。
・ 企業革新(=企業システムの革新)活動は、各層の革新(「組織文化・風土の革新を含む事業実態の革新」、「ビジネスプロセス(業務・取引)の革新」、「情報システムの革新」)を全体整合させて進めるべき事
・ 特に、事業実態を適切に写像し更に情報システム層の要件となるべき「ビジネスプロセス層」の実態把握・評価・設計・再構築という革新活動が重要である事
・ 従ってIT(情報技術)の導入や情報システムの革新は、このビジネスプロセス革新をサポートし実現する事を目標とすべき事
等を表わしている。
このようなビシネスプロセスの視点で企業システムを捉える捉え方は大別して二つある。“企業システム(APQCの企業のビジネスプロセスモデルで表記)”と、“サプライチェーン(SCORモデルで表記)”である。図表2は、この関係を表わしたものである。
[図表2]企業システムとサプライチェーン

(c) Copyright 1997. All rights are reserved by Korenori Umezawa@ERP forum Japan
この図から読み取れる“企業システム”と“サプライチェーン”の視点の違いは以下のようである。
・ 企業のプロセスの全体定義/製品(サービス)の供給関連プロセスだけにフォーカス
・ 企業内で記述が完結/企業間のプロセス連鎖も表記
・ 企業間を跨るプロセスは想定せず/PLANプロセス(特にP0やP1)は企業間を跨る
・ 業務プロセスの識別が目的/業務プロセス連鎖の標準記述が目的
このように、製品(サービス)の供給関連プロセスという企業の“本業”にフォーカスし、更には“企業間”を視野に入れた運営管理が“SCM(サプライチェーン マネジメント)”である。本論では、“企業システム”全体の評価を網羅的に扱うのではなく、SCMの視点から評価項目を選定し、測定結果を分析し、サプライチェーンを再構成するに至る“SCM方法論”としてのSCORを通して“ビジネスプロセスの評価”を整理してみたい。
2.SCM(サプライチェーン マネジメント)の狙い
[図表.3]SCMの戦略目的
Important drivers are Customer Satisfaction

出典:SCORワークショップスライド by Scott Stephens of Supply-Chain Council Inc. 1997
図表3は、SCC(サプライチェーン協議会)がまとめた、サプライチェーン マネジメント実践企業の戦略目的がどこに分布しているかを統計したものである。これによると、SCM実践企業の主要な戦略的な関心は
・ 「顧客満足(Customer Satisfaction)」度の改善
・ 「利益(Profit)」の増大
・ 「製品品質(Product Quality)」の向上
にある事が分かる。特に「顧客満足」項目と「利益」項目とは、顧客という企業(サプライチェーン)の外部要因と株主を始めとする企業内部要因とを、バランスさせて改善していこうとの経営者の狙いが如実に表れている。売上規模や市場シェア、市場対応スピード等は、それらの主目的を達成するための手段と見ているのである。
[図表.4]SCM関連投資効果評価(Perceived Benefit of SCM-related Investments)

出典:SCORワークショップスライド by Scott Stephens of Supply-Chain
Council Inc. 1997
図表4は、これらのSCM実践企業が関連投資による効果をどのような項目で評価しているかを示したものである。これによると、製品開発や販売売上(Sales)、マーケティング、更には製造(Manufacturing)という基幹業務項目よりは、購買、在庫管理、輸送、倉庫管理というロジスティクスの改善に貢献しているとしている。需要予測も高い得点を得ているが、決して“SCM=需要予測”などとは見ていないようだ。イケイケドンドンの時代の基幹業務機能強化/設備能力増強面の評価から、顧客視点に立って需給バランスを工夫する事に貢献できた項目へと評価のポイントが移っている。
更に、SCMを「サプライチェーンの効率追求策だ」、「スループットの向上による在庫の低減が目的だ」とする“一面的な捉え方は経営に致命的な誤算を及ぼす場合がある”という事実認識が、特に高度成長時代を脱した日本のような市場では課題とされるべきである。このことは、M.フィッシャー博士の論文**を読み返すまでもなく世界中の多くの実践事例が証明している。
**Marshall L. Fisher, “What is the Right Supply Chain for Your Product?” Harvard Business Review Mar. - Apr. 1998。 ダイヤモンド社刊「ハーバードビジネス(1998年11号):高橋洋訳」本論文を契機として取組んだサプライチェーン ビジネスプロセスの分類の試行研究については、本誌Vol.5(1999年秋号)「SCM研究プロジェクト最終報告§1.プロセス研究ワーキンググループ」参照
M.フィッシャー博士は「機能的商品」と「革新的商品」とに商品特性を分類することにより夫々に適合するサプライチェーンの特性を識別したが、SCORワークショップでは図表5のように「成熟商品」と「新規商品」とで、夫々が適合するサプライチェーン(Product Line:供給系)の重視すべき特性が異なる事を引き合いに出して解説している。
[図表.5]優位なプロセス性能への要求(Competitive Performance Requirements)

出典:SCORワークショップスライド by Scott Stephens of Supply-Chain Council Inc. 1997
「新規商品」を扱う供給系では、製品品質における「信頼性」が市場に受け容れられるかどうかが優劣を決め、更に市場の動きに即応できる「柔軟性」の良否が重要である事を説いている。他方「成熟商品」においては、総費用に占める「COGS(売上対応原価)」率が最も重要で、次いで供給系が保有する「資産の活用度」が良くなければならない、としている。SCM方法論としてのSCORは、これらの商品特性を見極め、自分の商品(ジャンル)に適合するサプライチェーンの要件を識別する事から出発するのである。この客観的な分析と認識が後述するSCORの評価基準(Metrics)の何を採用すべきか、現状(AS−IS)の測定結果やベンチマーキングの結果をどのように評価・分析すべきか、の大きな基準の認識になっていくのである。
本年初のSupply Chain Management Review誌に「新世紀のサプライチェーンに向けた、6つの教訓」と題する論文が寄せられている。筆者のR.デロッチャー氏およびJ.キルパトリック氏は、その中でこれからのSCMの必須要件を以下の6項目としている。
@サプライチェーン戦略の策定
A効果的な意思決定に必要なサプライチェーンにまつわる情報の収集
B効果的なパートナーシップとアライアンス=一つの企業で全てを実現する事はできない
C意欲的な新しいソリューションへの挑戦
Dパフォーマンスの壁を打破するための組織変革
E測定評価システムによる意思決定支援
<出典 : “Six Supply Chain Lessons for the MILLENNIUM” by Robert P. Derocher and Jim Kilpatrick, principals in Deloitte Conculting’s Global Supply Chain Practice, Supply Chain Management Review Global Supplement, Winter 2000>
この中のAおよびEが、評価管理システムとそれをサポートすべき情報システムに求められる要件である。@の「サプライチェーン戦略」に沿ってA以下のソリューションを選択し遂行していくとともに、評価項目の識別・目標レベルの設定・測定方法等が織り込まれた評価管理システム化が必要な事を示唆している。
3.SCOR方法論とMetrics(評価基準)
SCORでは、サプライチェーンを構成するビジネスプロセスの各レベル毎に設定した評価項目と基準とを“Metrics”と呼ぶ。“Metrics”の語源は「韻律法」等の作詩法を表わす文学用語のようであるが、この言葉には「バランスのとれた」とか「全体に調和した」という意味がこめられているのであろう。本論では基本的に“Metrics”と表現したが、日本語表現する場合には多くの日本語訳にならって「評価項目および基準」と訳している。
SCORのMetricsは、SCORのビジネスプロセス表現の階層毎に設定されており、プロセスの階層を通して上位のMetricsが下位では詳細の測定項目にブレークダウンされている。また、各階層毎に設定されているMetricsは、SCORの片やのデータベースであるGlossary(用語集:SCORで使用される用語の定義集。Metrics用語は“Metrics”と分類されており、必要なものは算定式が記載されている)に収録されており、項目単位で参照できるようになっている。
SCORの基本階層は図表6のようである。SCORによるSCM方法論は、このレベルに沿ってトップダウン(と、上下の試行錯誤)で分析と目標設定、ソリューションの選定、実現計画の策定を進めていくものである。(本誌Vol.1「SCOR入門編」参照)
[図表.6]SCORの階層構造

出典:北風道彦「SCM入門」(SCMリサーチレビュー/創刊号)
SCORの基本階層に対応する“SCOR方法論”を図示したのが図表7である。
[図表.7]SCOR方法論(4つのステップ)

出典:SCORワークショップスライド by Scott Stephens of Supply-Chain Council Inc. 1997
矢印が進め方で、基本的にはレベル1からトップダウンでブレークダウンしていく方法になっている。しかし、図中右側のレベル2から1へ、およびレベル4から3へという逆向きの流れが大きな意味を持っており、これがSCORの特徴の一つとも言えよう。即ち、トップダウンが全て理論的な体系に基づいて展開されていく訳ではなく、下位レベルの設計(Metricsならば選定と測定および目標設定)時に上位レベルとの整合チェックを実施すべき事、場合によっては上位の設計結果の見直しも行う事、等を推奨している。実際に、レベル1と2の間はかなり試行錯誤が必要である。これらを助けるのがSCORのプロセス標準記述であり、ベンチマーキングであろう。特にレベル2においては企業間の基本プロセス構成を決めてしまうので、商品やサプライチェーンの特性分析、企業戦略を反映し実現性がバランスしたMetricsと目標値の設定が重要である。
またSCOR標準モデルには、第4レベルは定義されていない。具体的な業務作業レベル、システムの実装レベル(Implementation Level)であり、具体的なソリューションの設計レベルと見ているからである。企業内および企業間の変革の遂行は、企業毎、プロジェクト毎に独自のものであるべき、との思想に基づいている。
図表8はSCORレベル1で標準的に設定されている12項目のMetricsである。
[図表.8]SCORレベル1パフォーマンス測定基準(Level 1 Metrics)

出典:SCORワークショップスライド by Scott Stephens of Supply-Chain Council Inc. 1997
これらは更に「信頼性」4項目、「柔軟性・応答性」2項目、「売上原価率(COGS)」3項目、「資産効率」3項目となっている。この内の「信頼性」と「柔軟性」は主として顧客満足を目的とする「顧客視点項目」として、「売上原価率(COGS)」と「資産効率」は企業内部利益および体質に直結する「内部視点項目」として区分けしている。この区分けは、評価項目選定の際のバランスを考慮する参考になる、としている。
(2日間の)SCORワークショップでは、このレベル1Metricsの定義と適用の仕方の学習にかなりの時間を割いている。戦略的な企業目標の設定、サプライチェーン経営評価のバランス確保を目的とする基礎的な研修であるが、これは殆どSCORの領域というより一般的な経営評価手法の学習である。また、SCORはサプライチェーン協議会の主力メンバーで構成される技術委員会(Technical Committee:PLAN、SOURCE、MAKE、DELIVERの4部会と統合委員会が活動している)で不断のアップデイトを実施している。メンバーからの新たなベストプラクティスの提起を反映したプロセスやMetrics定義の改廃、より高度な標準記述への進化、SIG(Special Interest Group:業種別検討グループ)からの提起によるアップデイト等である。
Metrics、特にSCORで標準記述されたMetricsは、業界やグローバルな他企業とのベンチマーキングに威力を発揮する。確かにベンチマーキングは競争力・実力の開示につながりかねないリスクを持っている。「皆が“ベスト・イン・クラス”企業になってしまったら競争の余地は無くなるのでは」等と真顔で案じる人もいる。しかし、企業経営ましてやサプライチェーン経営はそんなに単純なものではないし、自製品の特性や所属するサプライチェーンの特性たるやカテゴライズはできてもその確からしさの程度は多様であり、あるいは瞬間のものかも知れない。ましてや、経営者を始めとするステイクホルダー達の意思や認識には夫々に“個性”があるのだから。
「ベンチマーキング、6つの効果」と題してベンチマーキングの効果を整理した論文があるので紹介しておこう。
@目的の絞り込み=他社比較による客観的な位置付けの明確化
A新たな企業活動への変革事例と測定評価基準の提示
B中間管理層に変革の必要性を確信させる
C改善のチャンスを明確にする
D改善活動を実現するために必要となる投資を正当化する
E継続的な仕組みにより傾向の評価ができる
<出典 : “Benchmarking as a Change Agent at IBM” by Jeffry C. Egan, Director of IBM Corp., Supply Chain Management Review, Winter 2000>
以上の観点を織り込んで、ビジネスプロセス エンジニアリング(工学“的”業務設計技法)の観点からSCORを評価してみた(図表9)。再々述べるように、SCORは柱となる確固とした理論体系を基に演繹的に出来上がっているものではない。多数の実践企業の事例を収集し吟味捨象してモデル化し、改良を重ねてきたものである。その意味でSCOR方法論を完全な体系として理解するのは間違いで、コンサルテーションや支援ツールの組み合せを伴って始めて成果を生み出せるもの、あるいは逆に今後とも進化が期待できるもの、ともいえるであろう。(この視点からのSCORの評価は、本誌Vol.5「SCM研究プロジェクト研究員報告」参照)
[図表.9]BPE(Business Process Engineering)とSCOR

出典:梅澤伊憲、SCMリサーチレビューVol.6(2000年冬号)
4.SCORケーススタディ
では、SCORを使ってSCMの見直し、再構築を進めるイメージはどのようなものであろうか。一貫した事例の全体像については、本誌の「特集2.SCOR実践事例」を御参照願いたい。ここでは、仮想の単純化された業界のインバウンド(セットメーカーから見て調達系)のサプライチェーンを、SCORの第2レベルで記述したものの現状(AS−IS)と目標形(TO−BE)を併記したものを紹介する。(図表10および11。このケーススタディについては、本誌Vol.5「特集.SCM研究プロジェクト最終報告」を参照されたい)
[図表.10]自動車部品にみるサプライチェーンモデル表記(AS-IS)
自動車部品業界のインバウンド サプライチェーンを、前項のカテゴリー別にSCORを使って単純モデル表記してみる(P1のイニシャチブ<点線:下位計画略>とCODPの位置に注目)

出典:梅澤伊憲、SCMリサーチレビューVol.6(2000年冬号)
[図表.11]自動車部品にみるサプライチェーンモデル表記(TO-BE)
前項で想定される自動車部品業界のインバウンド サプライチェーンを、SCORを使って単純モデル表記してみる(P1のイニシャチブ<点線:下位計画略>とCODPの位置に注目)
出典:梅澤伊憲、SCMリサーチレビューVol.6(2000年冬号)
ここに至るまでには、商品(このケースでは一次部品メーカーを中心に捉えようとしているので、この場合の商品はセットメーカーから見た“部品”という事になる)の特性分析、あるいは技術動向やセットメーカーを跨った流通構造の特性分析、技術集約や製造拠点、流通経路(ワークショップでは“Organization Map”および“Geographic map”と呼んでいる)等の分析が成されているわけである。また、SCORレベル1での記述も必要かも知れない。但し、SCORレベル1による記述は、レベル1での12項目のMetricsの選定とベンチマーキングのために必要になるので、直接第2レベルで記述して例示の網掛けのような企業単位を明示するやり方の方が実際的かも知れない。実際SCORワークショップでは、レベル1とレベル2の間の試行錯誤を強調していた(図表7)。
このようにレベル1(実際はレベル2まで展開)で記述された企業毎の基本プロセス「PLAN」、「SOURCE」、「MAKE」、「DELIVER」に対して、標準で設定されている12項目のレベル1Metricsからの評価項目の選択および改善目標設定を行う。この際に、先に述べた取り扱い商品の特性分析と、それに適合するサプライチェーンの要件が、企業戦略を反映して分析されている事が必要である。また、これをより広い視野で客観的に遂行できるのがベンチマーキングだとされている。
図表12は同業他社や業界トップ企業、さらにはグローバルな測定企業母集団の平均値等を参照してベンチマーキングした例である(実数値は隠してある)。
[図表.12]SCORレベル1ベンチマーキング イメージ

出典:SCORワークショップスライド by Scott Stephens of Supply-Chain Council Inc. 1997
これらから、自企業の改善は何処にフォーカスすれば良いか、実現性やバランスを見て項目毎の目標値をどこに置けば良いか等が充分に吟味されていく。実現性やバランスの観点では、次のレベル2へのブレークダウンとレベル1Metricsとの相関評価が重要となる。
図表13は、SCORワークショップで実際例として説明された、SCORレベル2で選定され設定された指標と目標値である。SCORメンバーシップ(SCORワークショップを受講できるのはSCCメンバー企業だけである)の関係から実数値を公表する事はできないが、以下の二つの観点でバランスを取った結果と思われる。
・ レベル1.Metricsとの整合
・ レベル2.Metrics相互の整合
[図表.13]SCORレベル2統合指標 イメージ(AS-IS⇒目標値)

出典:SCORワークショップスライド by Scott Stephens of Supply-Chain Council Inc. 1997
すなわち、あるものはベンチマーキングの結果の「ベスト・イン・クラス(業界トップクラス)」を目標としており、あるものは比較優位を、更にあるものは標準レベルを、という具合である。SCORに記述されているMetrics項目全てを測定・評価対象とする事は当該企業固有の戦略の欠如を物語っているし、測定項目全てについて「ベスト・イン・クラス」を目標とする事は、戦略的価値評価に基づく意思決定が成されていない通常実現性に乏しいケースと言えるであろう。
このようにして選定されたMetricsの内、継続的・定期的に測定し状況把握分析を必要とするものは、情報システムに組み入れられて必要なタイミングで必要な管理者に報告される仕組みにしなければならない。この為に、ERPパッケージのような統合された“企業システム”が必要となるのか、企業を跨って情報収集しタイムリーな分析を可能とする新しいシステムソリューションを必要とするのかは、対象とする企業とサプライチェーンの特性等によって異なってくるであろう。
また、現状(AS−IS)の記述や、基本的なベンチマーキングはレベル2までで止めるのが通常のようで、詳細記述を必要とする部分についても最深3レベルまでである。ここにも、現状の記述や測定値の収集が難しい現状システムに拘泥するよりは、革新に向けた基本的な意思決定が出来れば良いという実際的な姿勢が窺われる。SCORではレベル4以下の階層を標準記述しない、という基本方針もここからきている。
5.おわりに
このように、SCORをその発祥の原点であるSCM方法論(Methodology)として捉えると、「参照モデル」と名付けている事の意味や、サプライチェーン協議会がSCORを特定の企業や業界団体に依存しないイニシャチブ(主導力)の根拠としている理由が良く解かる。参加メンバーが対等の立場で参画し、議論し、自社に持ち帰って実践し、更にその結果をSCORに反映し、その中から「ベンチマーキング」のような実践的なアライアンスが幾つも生まれ、…。少なくとも米国においては、このような活動の「良い循環」が形成でき「SCM方法論の進展とサプライチェーンを通した産業競争力の強化」に相当の貢献をしてきた事は間違いないだろう。
しかし、日本ではどうか。更にはSCORの「グローバルスタンダード」としての発展性、その面でのサプライチェーン協議会(SCC)の運営と日本企業の参画体制は?最後にこれらの今後の課題を展望する。
(1) 日本企業が納得でき活用できるSCM方法論への進展
@ 広範な製品やサプライチェーンの特性(attribute)分類の蓄積と、SCORのプロセス記述およびMetricsとの関連付け
A サプライチェーンを構成する企業群を跨った「顧客視点」のイニシャチブ設定方法論の確立と、そのSCOR方法論への組み入れ
B 第4レベル以下の業務プロセス定義(特にコモンプロセス)と、アウトソーシング事業や情報技術ソリューション(方法論やIT製品)のライブラリー化
C 数多くの企業別や業種別のSCM実践活動と、数多くのシーズ別(例えばERP、SCP、OO、EC、EDI等のIT要素別)の取り組みの、全体のマッピングと有効な協調体制
(2) 日本のSCOR運営参画体制に望まれる事
D 日本のSCM実践活動とSCOR方法論の結びつけ <技術委員会(TC)に対応する日本ドメインまたはアジアドメインの編成>
E ビジネスプロセス標準記述言語としてのSCOR体系のグローバルな維持運営(例えばISO化)と、日本(アジア)での受け皿
2000年1月
梅澤伊憲