アメリカの企業戦略のすごさ

=小論説=

2001年6月14日
(株)ライフプレナーグループ・ジャパン コンサルティング・パートナ 岡田英明



 私どもが、カーネギーメロン大学院大学の協力で進めている、「(日本の)エグゼクティブのためのIT戦略の研究フォーラム」は1993年からスタートしていますが、過去を振り返りますと、常に日本の経営の世界で話題にするよりも3年から5年も先行して、アメリカの動きを探ってきたことになります。大学や企業だけではなく、行政府のトップからも情報を得ており、日本の行政府の後進性がよく分かります。

 さて、SCMに関連してですが、1998年に、北米のコンシューマ・パッケージ・ドフーズ業界では巨人のクラフト・フーズ社(KF社)のECRの全貌を、副社長から聞く機会を得ています。日本の取り組みと明らかに違うのは、ECRへとりくむKF社のフィロソフィーがしっかりとしているという事です。同じ事が、1999年に訪れたコカコーラ社のIT戦略についての話でも聞いたのです。日本の場合には、IT戦略は、ほとんどがITのサプライサイド(メーカやベンダー)あるいはコンサルタントが言っている声ばかりが聞こえてきて、多くの企業は、その声に押されてIT戦略に取り組んでいるように見えます。

 KF社に感心したのは、1993年にECRを本格的にスタートさせるに当たって作った戦略です。彼らは、ECRを4つの戦略のシナリオで、戦略の展開を進めたのです。
●サプライチェーンの効率の革新
●取引企業の価値を高める協力関係の構築
●消費者の購買意欲の創造
●ECRの可能性の拡大

 1993年に最初に手がけたのは、SCMだったのです。当時KF社の顧客である小売店(大型小売店も含む)が、カテゴリー・キラーの出現で、収益を落としていたときで、そうした顧客の活性化には、SCMのプライオリティが高いと判断してのことです。1995年にKF社は、ECR戦略を見直しています。さきほどの4つの戦略のうち、前の3つの戦略に重点を置いて、次々と展開されるわけですが、ファスト・ムーバーである食品業界ですから、こうした戦略の全てが成功するわけでないことも十分に承知していました。KF社がとくに力を入れているECR戦略は、消費者の需要創造です。ECRの専門担当者を、全従業員の1割弱置いている、というのもすごいことです。

 彼らは、どの戦略の実行にしても、科学的経営手法(例えば会計手法ABCを早くから導入する)やユニークな経営手法を考え出して、KKDではない行動をしていることです。未来の市場を展望して、目先のECRではなく、付け入る隙間を残さない包括的で広いECRの経営フィロソフィーを持って、かつ具体的な成果を計画する、KF社のすごさです。

ψψψ June 14, 2001<<<岡田英明>>>