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経営を科学するSCP
=「SCP入門」序文=
2001年9月
福島美明監修
(株)アドビックコンサルティング編著
工業調査会発行
「SCP入門」(福島美明監修、(株)アドビックコンサルティング編著)の寄贈を受けた。故福島さんが同社の設立を進めながら、その運営基盤としてのSCMビジネス方法論を試行錯誤してきた成果をまとめようとしていた本である。彼自身はこの本を目にすること無く急逝してしまったが、(株)アドビックコンサルティングの皆さんを中心に9月に世に出ることができた。彼のイメージが充分に生かされたアウトプットになっているのではないか、と思う。
早速、その中から
・序文
・目次
を紹介することにした。
特に序文は福島さんが自ら書き下ろし、そのまま脱稿したそうである(「序文は100パァセント福島が書きました」編者松林光男さん)。彼の心意気がひしひしと伝わってくる。
2001年11月
梅澤伊憲 記
経営を科学するSCP
@経営科学の進化系のSCM
マネジメントの大家、ドラッカーは様々な著作で世界経済の発展に最も貢献したアメリカ人としてIE(インダストリアルエンジニアリング)の創始者F・W・テーラーを紹介している。テーラーは約100年前、当時、まったくの無管理状態であった生産活動に標準時間というメジャーを取り入れた。作業を要素に分解し、最適な組合せをすることにより生産性を高めるという科学的なアプローチを開発した。これを科学的管理手法と呼び、産業界に広めた。
この手法は単純である。しかし、生産活動にこのような科学的な取り組みが有効であると証明したことが、その後の産業界の継続的な生産性向上に大きく寄与したとドラッカーはいう。IEは進化し続けた。そして、100年を経て、産業界全体の生産性を向上させる科学に進化してきたと私は思う。
SCM(サプライチェーンマネジメント)は、お客様のお客様からサプライヤーのサプライヤーまでの事業の構造をビジネスプロセスという観点から要素に分解し(この際、サプライチェーンカウンシルの提供するSCORが要素分解に有効である)、プロセスの性能を測定し、最適な組み合わせを追及する。
SCMはIEの進化系といえないだろうか?実際、アメリカでSCMを推進する多くのリーダーは、IEや生産管理そしてロジスティクスあるいはOR(オペレーションズリサーチ)の専門家であり、IEの進化系のどこかに位置する人が多い。
A細部に神は宿る?
一方、日本のIEは個別改善技術として産業界に広まった。
日本企業が得意なのは細部まで知恵を絞り、日々継続的に改善を図る実践力にある。ここにIEは活用された。トヨタ生産システムはその典型である。トヨタはIEを儲かるIEと称し、徹底した実践の手法として活用した。この中からカンバンシステムんどのユニークなシステムも生まれた。徹底した現場主義である。
このような活動が、日本の成長を支えたのは間違いない。
細部に神は宿る?細部までの徹底が日本の製造業の強みである。
B経営科学の時代に突入する
しかし、製品が多様化し、ライフサイクルが短くなり、ビジネスプロセスが企業をまたがり国を越えてくると、細部の追求だけでは競争力は保てなくなる。特に半導体のように設備が生産活動の中心で極めて複雑なプロセスの場合は、個々の工程能力の改善だけでは全体の強さは作れない。
現場主義は重要だが、現場主義だけでは企業の強さは作れない。そういう時代がきた。
サプライチェーン全体のモデル化、全体最適化の時代、経営をモデルとしてとらえITを活用して最適化を追求する時代、真の経営科学が求められる時代がきた。
その主役はSCP(サプライチェーンプランニング)だと思う。
SCPには経営科学の様々な手法が織り込まれている。予測手法、制御手法、ボトルネック対策、在庫計画、スケジューリング、制約の理論などである。かつては10億円を超えるようなスーパーコンピュータでなくてはできなかったシミュレーションが、数千万円のUNIXあるいはNTマシンで実現する時代がきた。高速化したCPUと巨大化し低コスト化したメモリが、SCPのパワーを十二分に引き出す。
現実のサプライチェーンモデルを仮想空間に理論モデルとして設計できれば、最適解は瞬時に計算できる。仮説を何度も何度もシミュレートできれば、人間の曖昧な短絡的な回答よりも利益を生み出す最適な答えを追及できる。全体最適化が可能となる。ナレッジを蓄積し、継続的な進化が可能となる。
日本人はモデル化が苦手な民族かも知れない?
しかし、もう細部の神に頼るだけではグローバルな競争には勝てない。苦手の克服が今、求められている。
C日本から世界へ
今、日本の産業の多くが苦しんでいる。その中で、製造業は世界に通用する重要な産業である。特に、エレクトロニクス、デバイス、自動車、産業設備などの変化が速く、複雑で、細部までの品質の作り込みが大切な商品の分野で日本は強いと思う。そこで日本の強さをモデル化し、ITを最大限使い込めば、日本の強さはさらに強化されるはずである。
本書の筆者たちは、日本の製造業の第一線でSCMのモデル化、ITの実装化に取り組んでいる実力者である。この実力者が集まり日本の製造業のビジネスモデルの進化を支援するという大志を抱いた。AdBiC(アドバーンスト・ビジネスモデル・アンド・IT・コンサルティング)コンサルティングが、2001年6月に活動を本格的に開始した。
日本から世界へ。製造業で活躍する多くの実力者と一緒に日本から世界へ、日本の製造業の強みをビジネスモデル化し、IT化し、世界に発信していきたい。
そんな、大きな願望を実現するための第一弾が本書の発行である。SCPは真に役に立つ経営科学手法として多くの企業に広まり、日本企業の再生に大きな貢献ができるはずである。ERPもSCMも工業調査会から啓蒙が始まった。
SCPの普及も、きっとこの本から本格化するであろう。このような機会を与えていただいた工業調査会の新谷滋記氏に感謝してやまない。
日本から世界へ、筆者たちの挑戦もこの本を機会にさらに加速していきたい。これを機会に、さらに多くの製造業の実力者の方々との交流も深めたい。
そんな、夢を本に託してペンを置くこととする。
2001年7月
監修者 福島美明
(目次)
第1章 SCMとはどんなものか
1.サプライチェーンマネジメント
2.アメリカのSCM先進企業(6社)事例
3.サプライチェーンカウンシル
4.サプライチェーンカウンシル日本支部
5.サプライチェーンカウンシルの提唱するSCOR
6.SCORの使い方、効用
第2章 SCM業務設計法
1.サプライチェーン再構築の目的と範囲
2.サプライチェーンビジネスモデルの検討
3.業務設計の進め方
第3章 SCPソリューションの基礎知識
1.SCPが企業にもたらすもの
2.SCPシステムを業務に活用する
3.SCPシステム導入がもたらす業務・組織改革
4.SCPシステムの情報技術
第4章 SCPの提供する機能
1.需要予測機能
2.統合生販在プランニング
3.在庫物流計画
4.生産スケジューリング
5.調達計画・部材供給計画
6.納期回答
7.SCP情報活用(DWH、Operational DB)
8.ROAベースの収益分析
第5章 SCP導入プロジェクトの進め方
1.SCP導入プロジェクトの全体像
2.ユースケースによる要件分析
3.全体システム構成の設計
4.SCPパッケージ選定
5.SCP導入費用見積りと効果算定
6.SCP機能マッピング
7.データマッピングとデータクレンジング
8.SCP周辺機能の構築
9.プロトタイピング
10.SCP導入テストと検証
11.ユーザー教育と保守体制整備
第6章 SCP導入事例
1.富士通HDD事業におけるグローバルSCMへの取り組み
2.シャープIC事業本部における生販統合核心への取り組み
第7章 資料
1.SCP成功キーワード100
2.SCPパッケージベンダーと問合せ先
(監修者、筆者:監修者・筆者プロフィールより)
福島 美明(代表著者、監修)前(株)日本ビジネスクリエイト代表取締役社長、前(株)アドビックコンサルティング代表取締役社長(兼任)
松林 光男(編者、資料執筆)(株)アドビックコンサルティング専務取締役、(株)日本ビジネスクリエイト取締役
甲斐荘 泰夫(編者、第4章、第5章執筆)(株)アドビックコンサルティングITソリューションズ本部長
北風 道彦(第1章執筆)(株)日本ビジネスクリエイトSCM業務推進本部長
佐々木 伸(第2章執筆)(株)アドビックコンサルティング取締役ビジネスプロセス本部長
山本 久(第3章、第4章執筆)(株)アドビックコンサルティング代表取締役社長
杉原 健史(第4章執筆)日本マスクジャー・テクノロジー(株)プリセールス担当マネージャー
岡田 和保(第6章執筆)富士通(株)社内システム開発本部本部長
吉田 豊満(資料執筆)(株)アドビックコンサルティング取締役ビジネスモデルプロデュース本部長
(了)