「ザ・ゴール」談義 再び
=日本市場にとっての「ザ・ゴール」の今日的意義=
編集 SCMresearch.com管理人/梅澤伊憲
ゴールドラット著「ザ・ゴール」の日本語訳本が出版されたのを契機に、その今日的な意義や日本企業の業務革新活動に与える影響などについて、様々な視点からの論議が交わされ始めた。当サイトでは、これらの論議の原文を執筆者の許諾を得てそのまま列挙する事を試みる。皆さんの異論・極論お待ちします(梅澤)
御覧になりたい該当行の
をクリックしてください。
でページトップに戻ります。
| [1] | 「ザ・ゴール」に見るIT化と業務改革の光と影 | Rankin' BizTech 2001/08/08 Recommended by BizTechより | 大山繁樹(日経IT21副編集長) |
【IT Pro提供】記者の眼
「ザ・ゴール」というビジネス書が話題を集めている。これは米国人のゴールドラット氏が独自に編み出した生産管理手法「TOC(制約条件の理論)」をビジネス小説の形で説明したもので、「IT化による業務改革」を面白く解説している。
ザ・ゴールは米国で84年に出版されて以来250万部を超えるベストセラーになり、サプライ・チェーン・マネジメントにも多大な影響を与えた。以前から日本でも一部のITコンサルタントで、その存在が知られてた。
しかし、「日本で出版されるとTOCを応用されてしまい、米国の製造業が日本企業に負けるためゴールドラット氏は日本語の翻訳を許可しない」という噂もあり、日本語では読めなかった“いわくつき”の1冊である。それが最近ダイヤモンド社から出版され、国内では早くも15万部を突破したという。
主人公は業績不振の大手メーカーの工場長。上司から「3カ月以内に現状を改革しなければ、工場を閉鎖する」と宣告されるところから物語は始まる。問題となっているのは工場内の在庫の山。これを削減して企業の目標(ゴール)を達成する方法として主人公はTOCを試みる、といったストーリー展開だ。TOCは、工場内のボトルネック(制約)部分を、全体最適の視点で改革するための手法で、部分最適ではなく利益の最大化がポイントだ。
TOCの概要や小説の中身はともかく、私が面白かったのは最後にある「著者のあとがき」だった。ザ・ゴールを米国で発売後、読者にどんなことが起こったかを書いてあり、それがIT化と業務改革の本質を捉えていると感じたからだ。実は著者はTOCを基にした生産計画ソフトを販売しており、出版はいわばPRの一環だった。ところがPRだけには終わらなかった。思いがけない動きが読者から次々と出てきたのである。
読者は主に次の3パターンに分かれるようだ。
1番目は「ザ・ゴールを読んだだけで、業務改革ができてしまった」という読者。つまり、特にITを導入しなくてもゴールに達したというわけである。出版の目的は本来、「業務改革にはIT化(つまり自社のTOCソフト)が必要だ」という点をアピールするためだった。しかし、本の通りに業務改革のノウハウを実行したところ、ITに頼らなくてもうまくいったケースが続々と発生したのである。
実際、出版後にTOCソフトは売れなくなったそうだ。この事実は「ITを導入することが業務改革ではない」ということを証明している。本来の業務改革は、ビジネス・プロセスを見直すことが重要であり、IT化は手法の一つに過ぎない。「ITさえ導入すれば業務改革できる」という考えは本末転倒である。つまり業務改革を妨げる問題点(つまりボトルネック)の解決は、IT化だけではなく社員の知恵と努力次第なのである。
2番目は「本を社内のリーダーや社員に読むことを奨励したが、結局、それ以上は何もしなかった」という読者。業務改革に取り組むために読んだものの、いざ読んでみると、今までの考え方を改める必要性に気付き、それで止めてしまったというわけだ。よくいわれることだが、やはり業務改革の実行はIT化というより「経営トップのやる気」にかかっている。
3番目は「いったんは業務改革に成功したが、次第に行き詰まってしまった」という読者である。なぜ、うまくいかなくなったのか。その理由は社内のボトルネックを解消して効率化したものの、社外のボトルネックがそのまま障害となったためだ。
例えば、工場で部品などをタイミング良く購入できず、製造ラインが止まってしまうといったケースだ。社外にボトルネックがある以上、社内だけを効率化しても意味がない。とはいえ社外までコントロールすることは容易ではない。サプライ・チェーン・マネジメントが進化すればするほど、これが大きな弱点になる。
携帯電話がいい例だ。市場が急拡大するとなれば各社が部品確保に努力するため、部品不足に陥って工場では生産ができない。さりとて、部品不足に備えて大量に購入すると、市場が冷えたときに在庫となってしまう。社内をIT化で業務改革しても、取引先が旧態依然としては効率化できない。
こうした三つの点は、いずれもIT化による業務改革を推進するうえで大きなポイントになるはずだ。日本国内がバブルに浮かれていた80年代後半に、米国企業はいち早くIT化の重要性と限界に気付き、新しい生産管理手法を実践することで競争力を強化したのかもしれない。
日本でザ・ゴールの出版許可が下りたのは、著者が「もはや日本企業は米国企業に追いつけない」と判断したからであろうか。
(大山 繁樹=日経IT21副編集長)
| [2] | 「ザ・ゴール」を読む意味 | 寄稿 | 岡田英明(株)ライフプレナー・グループ・ジャパン |
最近の日本では、流行のキイワードを、センセーショナルに騒ぎ立てるジャーナリスト的コンサルタントが跋扈していて、困ったものです。
サプライチェーンのときも、ブルウィップ理論を、鬼の首を取ったように書いている人がいましたが、このような理論は、すでに1961年にフォレスターMIT教授によって示されているのです。過去を勉強しないから、こんなことが起こります。ザ・ゴールも似たところがありますね。間違った紹介をする人がいるのですよね。
-----------------------------------------------------------------
「ザ・ゴール」を読む意味
話題の本The Goal を手にしたのは1994年、ボストンの空港でした。搭乗までに少し時間があったので、空港の売店を覗いていたら、ワゴンの上にThe
Goalがあって、「継続的改革のためのプロセス」というサブタイトルに引かれて、買ったのでした。19ドル95セント。
その後、この本はアメリカではベストセラーとなり、今年の夏には、ようやく日本で「ザ・ゴール」として翻訳が出版されました。
この本を始めて読んだときに、「ああ、こんなことを日本では、かつてやったものだな」と、そのときは思っただけでした。何か目新しいものがこの本に書かれているとは思えなかったので、それで、この本は本棚の奥にしまったままになっていました。
1998年に、急にTOC(Theory of Constraints)というタイトルの本がアメリカで続けて出されて、日本でも鼻の利いたジャーナリスト兼コンサルタントが、早速TOCを言い出して、本を出し始めました。TOCを言い出したきっかけはTheGoalです。キイワードに飛びつく皆さんは、きっとTOCの本をすでにお読みでしょう。
そこで今回日本で翻訳が出されたのをきっかけに、改めてザ・ゴールを読み直すと、やっぱり「ああ、こんなことを日本では、かつてやったものだな」という過去を回想しました。
私は、1973年に医薬品製造工場の革新プロジェクトを命じられて、工場へ転勤になりました。
ちょうど第1次石油ショックの最中で、新任の工場長も、かなり意気込んで工場の革新を進めようとしていたので、私は工場の中の各部門から優秀な人材を選出して、プロジェクトチームを作りました。プロジェクトは、工場長直轄の仕事として実行されました。そこでやったことは、まさにThe
Goalに書かれていることと同じ、「慢性的な惰性からの脱出をはかる沢山の革新をする」ことだったのです。このプロジェクトを進めるに当たって、どのような方法でやるかを考えるために、日本の製造業で先進的に経営革新を進めている企業を研究しました。
1970年代から1980年初期にかけて、当時の日本の製造業は、石油ショックの波を受けて、経営革新を迫られていたのです。その製造業の革新のバックボーンとなったのは、OR(オペレーションズ・リサーチ)とIE(インダストリアル・エンジニアリング)でした。多くのエンジニアは、日科技連や日本能率協会で学習していました。経営革新の中でも生産部門の革新に使われた手法がIEの中の「ナドラー教授のワーク・デザイン」法だったのです。
「ナドラー教授のワーク・デザイン」法の出発は、まず問題解決を考える前に、われわれが問題を解決する目的を考えることです。目的展開を徹底して行ないます。The
Goalと同じです。違うのは、目的展開を追求したあとに、目的達成のために不要な機能を排除した理想のビジネスプロセスを考えることです。その後で、現実とこの理想との間に横たわるギャップを問題として、その解決の方法を検討することなのです。そこには当然、理想には近づけないボトルネック(制約条件)がまず浮かび上がります。これもThe
Goalと似ています。
こうして、当時の日本の「考える製造業」では、いままでは不可能だとあきらめていた問題に取り組んでいったのです。われわれの合言葉は、「不可能への挑戦」でした。
その後、製造業はいくつもの経営の危機に遭遇して、その都度業務革新を思い切って実行して、危機を乗り切ってきました。現在、強い経営力を持って世界で活動している日本の製造企業は皆、こうした過去を持った企業なのです。私は、The
Goalを読みながら、自分の過去を重ねていました。
The Goal は、企業革新のケーススタディが書かれた本です。これは製造企業の業務革新の苦闘の物語です。製造業にいる人には、1つ1つがうなずけるし、理解できるでしょう。しかし製造業にいない人には、分からないかもしれません。
もし企業の革新の方法を勉強したい人は、その後に書かれたTOCのどの本を読むよりも、The
Goalを読むべきでしょう。というのは、The Goalによって触発されて書かれた本は、著者それぞれの考え方が支配して、著者のめがねを通したTOCになっていて、The Goalが言いたかった本質がぼやけてしまっているからです。特に製造現場で、業務革新の経験を持たない著者のTOCは、概念的で、どこが重要なことなのか、分かってはおりません。
読者は、TOCを書いたコンサルタントや大学の先生のいろいろなTOCで、企業の革新の方法を考えるのではなく、The
Goalが提供してくれた経営の現場の生の革新のケーススタディから直接学ぶべきです。TOCとして整理するのなら、The
Goalから直接自分で学んだことを整理するべきです。そうしなければ、経営の現場でTOCの考え方を使った企業革新を、自分のものとして実行することはできないでしょう。
かつて企業革新に関わったことが無い人、かつての企業革新に関わった先輩を身近にもっていない人、そういう人たちにはThe
Goal は、格好の学習の教科書です。いい本が翻訳されたと思います。
本のカバーベルトには、ダイヤモンド社が、この本は日本人には読ませたくなかったので、今まで翻訳が許されなかった、とか、あたかも全く新しい経営の考え方が書かれているかのような、煽動的な言葉が並んでいます。しかし、それは日本の過去を知らない人の誤った言い方です。
ψψψ
岡田英明
(株)ライフプレナー・グループ・ジャパン
E-mail : okadalp@iea.att.ne.jp
| [3] | プロセスの設計屋の観点からのTOC? | 引用? | 大石高至(鰍mEC、SCC日本支部) |
プロセスの設計屋の観点から見るとTOCはですねぇ・・・
The connections between subprocesses with 1:1 links generally constitute
a well-formed process. This goes back to Eliyahu Goldratt and his work
on constraints -- if a work item (the object of a process) is intended
to flow one step into the next on a 1:1 basis, then we should try to sychronize
or coordinate these steps within a proces. The other hand, 1:M and M:1
connections cannot generally be coordinated, because there are delays while
the many build up................
まっ、基本中の基本なんですけど(笑
-----------------------------------------------------------------
すいません。若干、インフォーマルなもの言いになっています。もし、不愉快であればやめます。インターネットのチャットや掲示板での、「ロールプレイなりきり」になれているもので(汗
(PCモードオン)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
農業や林業と同じだね。重要な割に誰も引き継がないという・・・ まあ、確かに朝早くから夜遅くまで働いて、1トンの水揚げをしました。けれども、給料は20万円です、ぢゃ間尺に会わないよ。もう第一次産業は副業だよ。だから、田植えも五月の連休にやる。連休内で終了できるために簡素化する。そうじゃないと、今の日本じゃ引きあわないって。
TOCだって、おれらの浅薄な理解によると、TQMみたいにすべてを改善するんじゃなくて、改善するべきところだけを改善すんだろ。・・・なんと言うグッドな響き、しなくていいところは手をつけなくていいんだ。まっ、一種のサボリのテクニックには違いないな。(爆
| [4] | 「ザ・ゴール」では見えてない部分 | 寄稿 | 岡田英明(株)ライフプレナー・グループ・ジャパン |
かつて日本の製造業が、生産システムの構築で革新に取り組むときに、大きな影響を与えてくれたジェラルド・ナドラーさんは、早稲田大学で教鞭をとっていたことがあります。その当時の日本の指導的役割を持っておられたのが、吉谷龍一元早稲田大学教授でした。もう、この両名のお名前を知っている人は、企業にはいないでしょう。両教授の名著は、もはや絶版になっていて、アメリカでも知る人は本当に少なくなってしまいました。
ナドラーさんや吉谷さんが最初に取り組んだのは、テーラーの流れを汲む「ワークデザイン」です。このワークデザインは、考え方のバックボーンになっているのは、IE(インダストリアル・エンジニアリング)というメソドロジーがあって、それが現在でも十分に使えるメソドロジーなのですが、時代の流れなのか、IEを使う人が世界的にいなくなってしまいました。
ザ・ゴールの所長アレックス・ロゴがかつて指導を受けた恩師ジョナから教わった考え方は、ナドラーが教える「ワークデザイン」の考え方と変わりがありません。KT法も非常に似ています。
ジョナのアドバイスで、ロゴは部下に相談して、工場の改革に取り組んでいきますが、このときに製造の各工程でなされたさまざまな改善や工夫については、さらりとしか書いてありません。ワークセンタや工程では、さまざまな改善や工夫が行われたはずです。
スループット、在庫や作業経費を改善あるいは革新するには、各ワークセンタと工程の連が、どれだけのアジリティを持っているのか、そのアジリティの枠は広げられるのか、の技術的な検討が不可欠です。工程を変革するというのは、机上では簡単に言えても、現実の現場では簡単なことではありません。
●工程の各設備が、製造加工の品質と歩留まりを落とさずに、ロットサイズを変えることがどこまで可能なのか(業種によっては、設備のロットサイズのフレキシビリティの範囲が小さいものがある)
●工程が汎用である場合に、組み換え段取り時間をどう改善できるか
●工程の連の中で、工程によってMTBFが違うものがあって、スループットを落とさずに、工程の連をどのように編成できるか
●工程が故障したときの対応の方法、代替工程の確保は可能か(ロットサイズ、歩留まり、品質が同一か)
●工程の連の中で、工程と工程との非同期な能力のバランス化で、工程がどこまで段取り時間を最小化可能か
●工程の連で、工程を密結合することが、スループットに対して最適ではないことがある
●工程に所属する作業員が、どこまでフィレキシブルか。作業員数の柔軟性、欠勤の補充への対応、作業員の作業能力の万能性の限界、作業員と生産性や歩留まり・品質との依存性など、どこまでアジャイルか
●工程のレイアウトが、スピード化に十分か、インバウンド・ロジスティックスは適切にできるか。仕掛の搬送、原材料の搬入、仕掛在庫の管理場所と管理法に問題はないか
業種によってはこの他にもまだたくさんあるでしょう。
こうした現場での問題の解決には、設計、製造技術、製造、品質、営業などの部門の参画が必要であるし、創意工夫が必要ですし、テスト製造も必要です。その結果、非ボトルネック工程のロットサイズが制約になることだってあります。
ゴールドラット氏が、「ザ・ゴール誕生の背景とその後」の中で書いていることには、こうしたザ・ゴールでは触れていない部分が関係していると、私は考えます。
原価計算をやったことのない人が、ABCやABMは理解できないでしょう。それなのにABCを論じているのは滑稽です。「ザ・ゴール」も多かれ少なかれ、これに似ています。
実際に製造現場にいて、製造の改革をしなければならないミッションを持っている人なら、「ザ・ゴール」を読んだだけでも、多くのヒントを得ることは可能です。ただし答えを得ることはできません。なぜなら製造の種類や現場が違うからです。製造現場を知らなかったり、製造現場をイメージできない人には、「ザ・ゴール」を読んでも、得ることは表面的なものでしかないでしょう。TOCの手順とかいうことだけでしょう。
話は別になりますが、新日鉄がロジスティックスのシステムを韓国の浦項から導入する、というニュースは、どのように受け止めたらいいのか、考え込んでしまいます。
石を投げればロジスティックス・コンサルタントに当たるぐらい、日本には大勢のコンサルが跋扈していながら、誰一人として新日鉄を満足できなかったということでしょうか。
中国や韓国の若者は、ITでは日本などには来ずに、アメリカへ留学します。そうして卒業後に、母国へ帰って仕事をします。ITでは、特にソフトウェアでは、日本を追い抜いて高いレベルになりつつあることは間違いないでしょう。
日本の多くのアプリケーション・ソフトウェア屋さんは、概念的な(アバウトな)知識は持っているのに、基礎理論とか現場の知識には乏しい、ということをいつも感じています。エンジニアではなくて、大工さんが多いのです。ψψψ
2001年8月 岡田英明
(株)NIXシステム研究所 コンサルティング・パートナ
| [5] | 残念ながら | Eメールコメント | 今岡善次郎(鰍aDI研究所) |
ザ・ゴールは30万部(?)ベストセラーになっていますが、日経から出た「トヨタ式最強の経営」(柴田昌治、金田秀治共著)も40万部?とベストセラーになっていますね。組織・人間に焦点を当てたものはシステムなど理屈モノより良く読まれますね。(残念ながら)
今秋、日本人によるスケジューラーの成功事例をもとにトヨタ式生産方式、TOCなどについての著作を予定しています。請ご期待です。
2001年8月 今岡善次郎
| [6] | ナドラー博士とTOC | Eメール寄稿 | 岡田英明(潟宴Cフプレナー・グループ・ジャパン) |
法制度審議会(日本)では、ナドラー博士のブレークスルー・メソッドを取り上げています。ナドラー博士のブレークスルー・メソッドは、アメリカでも広い領域で活用されてい
ます。
私も過去に、実際に企業でこれを使ってBPRあるいはビジネスプロセス革新をやっ
て、その有効であることを体験しました。ここでやったことは、「ザゴール」でジョナがロスに教えたことと同じです。いや、もっと広い問題のとりくみをやったことになります。
ナドラー博士は、「ブレークスルー」の著書の中で、名言を2つ述べておられます。
●問題とは、変化に対する欲求である。現状を変えたいと思えば、そこに問題が現れる。問題とは、変化を必要とする事柄の全てを言うのだ。
●目的を話し合うことは、行動することに比べて、相対的に簡単である。しかも、誰にも脅威を与えないし、かつまた関心を、論争するのではなく共通の目標へ向かわせることが出来る。つまるところ、われわれは、通常、目的についてはみなが同意することが出来るものなのだ。
工場の問題解決だけではなく、複雑な社会問題の解決に、ナドラー博士は多くの実績を持っているし、多くの支持者が居ます。
ジョナがロスに教えた最初のことは、目的を考えろ、でした。目的で合意できれば、次には何をしなければならないのかは、自然に導かれてくる、というのはジョナの考えであり、ナドラー博士の指導することなのです。
日本の地方の団体が、ナドラー博士のブレークスルー・メソッドに取り組んでいる例もあり、知る人は既に知っている「問題の創造的、革新的解決の方法」であるのです。
「ザゴール」の後で書かれた数々のTOC論は、「ザゴール」が示した本質を狭義に捉えていて、ナドラー博士のブレークスルー・メソッドに比べると、見劣りがします。
業種や学問的に違ってしまった領域では、せっかく優れたメソドロジーや研究成果が1つの領域で出ても、他の領域へ相互に伝播することが無いために、その優れたメソドロジーの恩恵に浴することが無く、社会的に見れば知識の無駄が起こります。集団の閉鎖性の引き起こす欠陥です。ナドラー博士のブレークスルー・メソッドを知らないで、TOCに驚くのは、こうした事が原因でしょう。
良いものはやはりいつまで立っても良いものなのです。広い目で、知的資産を活用しなければなりません。
2001年8月 岡田 英明
コンサルティング・パートナ、株式会社ライフプレナーGJ
| [7] | 「カオス・ニューラル・ネットワーク」 | Eメールコメント | 梅澤伊憲(SCMresearch.com) |
小生は放送大学で久しぶりに「カオス・ニューラル・ネットワーク」モデルを見ておりました。複雑系の数学モデルで有名なセールスマン問題(異なるN個の都市を最短距離で結ぶ問題)を例示していましたが、昔と違ってPCでかなりのシミュレーションを見せてくれるので非常に解かり易く感じました。N=10で場合の数が16万幾つというのは懐かしい数字でしたが、(これだけ演算スピードが向上した現在でも)N=20になると宇宙年齢内では演算が終了しない、との解説も変わりませんですなぁ。
という訳で、局所最適解を早く演算してグローバルモデルにフィードバックするという複雑系のモデル化と解法の研究が進んできたのですが・・・。
恐らく、実社会経済上のモデルとする場合の必要要件はもっともっと複雑で、単に通過距離を縮めたり、時間を短縮するなどという事ではないでしょう。訪問優先順位だとか、交通機関やコストの問題、夫々の稼働時間帯、果てはセールスマンの健康だとかスキルや、やる気だとか、・・・。
そして、この現実の必要要件の複雑さがグローバルモデルの制約要件となって、逆に解法の実現性をもたらしている、それがTOC理論の有効性の根底にあると思います。
丁度、「囲碁」と「将棋」の違いのように見えます。ルールの単純な「囲碁」の方が、局所最適解の評価が困難であり、「将棋」の方が、有限の時間内でコンピュータが人間の名人にも勝てるようになる、と見られているわけです。(浅学の私には不明ですが、このような「囲碁」と「将棋」の解法としての比較研究、なんて領域には先達が沢山いらっしゃるんでしょうなぁ・・・)
更に現実の「複雑さ」はもう一つの次元を必要としています。それは「変化」ですが、例えて言えば「桂馬」の飛び方がある時点から2間になったり、チェスのような動きが可能になったり・・・。ルール自体のある偏差内での変化、「摂動」、これが現実の経営モデルにとっては不可欠で、しかも年々そのウェイトを増しているということでしょう。
サプライチェーンを構成するプロセスの「中抜き」や「アウトソーシング」、流通するプロダクトミックスやプレーヤーの交代、等々、従来のBPEモデルでは所与の要件として定義すればよかったものが、解法が「ヒューリスティック」にモデル自体を変えていく、そんな企業モデルの構築と維持・発展を可能とする「方法論」が求められていると思います。
大分「SPAプロジェクト」の本質に近づいてきてしまいました。当面「起業(!)秘密」のベールをかけておく事にしましょう・・・(^o^;
<2001年8月 梅澤>