「DOSAコンセプト」を巡る論点

=ビジネスモデル学会 第1回コンベンションでの論議=

2001年6月
副座長:梅澤伊憲


本稿は、ビジネスモデル学会第一回コンベンション(ハワイ)の中で行われた「DOSAコンセプト」のプレゼンに対する質疑応答を基に、キーワード毎に補足を加えて論点を整理したものです。

(c)Copyright 2001. All rights are reserved by Korenori Umezawa@scmreserch.com


商店街
[課題提起]「商店街」のような既存の集積商業地環境活性化策としての「地域振興策」の延長だけでは、グローバルな「e環境」の変革の波が地域産業を中抜きし(真の)「住民指向」になっていかないという、地域の問題の解決にならない
[視点.1]「商店街」の問題は最終的には個々の店舗の経営力の問題で、力の弱い小売店が資本や技術力のあるメーカーや流通業に淘汰されていくのは、ある意味では健全な姿ではないのか
[視点.2]DOSAを既存の業態の「救済策」として捉えるのではなく、新しい業態の創出と見るべだ。新業態の形成の中で、既存の業態や「商店街」のような連合体も力が有ればイニシャチブを取っていく事が可能だろう

ビジネス機会
[課題提起]「住民」のディマンドを、製品やサービス、福祉や環境などをまたがって「最適化」させようという地域ドメインの形成は、ローカルに発生し処理される事が望ましい膨大な情報とその処理技術、そして広範な数多くのナレッジ・ソリューションを必要とし、多くのビジネス機会を潜在させていると考えられる
[視点.1]携帯電話の普及やブロードバンド、IPv6搭載家電機器の普及等々の、ITおよびその普及の進展は、膨大で従来は考えられなかった様々なデータのハンドリングをネット上に可能にする。これらを活用して「住民生活」レベルの飛躍的な向上に貢献するDOSAドメインに必要なアルゴリズムには、「超複雑系」とでも称すべき様々な解法が必要となるのではないか
[視点.2]ビジネスとして成立するようなモデル化が先ず必要だろう。モデル化の過程では、「サプライヤー」と「受益者」が明確で実収益が見込める製品やサービスに対象を絞る必要がある

様々な関連課題(今回のコンベンションでの他のプレゼンテーションとの関連)
[関連課題]東大生産技研松村助教授達の「消費と環境」というグローバルなテーマはもろに関わりを持ってくるし、宮城大学の藤井さん達の「チャネルフレンドリービジネスモデル」もディマンドマネジメントの視点で繋がってくる
[別途、整理いたします]

ITインフラ
[課題提起]更に、ブロードバンドなどのITインフラの話(有線ブロードネットワークス)もあって、DOSAの第二レイヤー(地域行政ミドルレンジ)の現実の一端を覗いた格好になった
[これも2日目の講演でしたが、帰国後のITインフラ事業関係者との意見交換でも、「目標が見えないところでITインフラ拡張競争だけがシビアになっている」との現状認識が強いようです]

過疎地問題と多様なDOSAモデル
[課題提起]サプライ側の利益性だけに依存しない需給最適化コンセプトは、山間の過疎地のように、このままだと切り捨てられていく地域の住民の受益性の改善の在り方として賛同できる
[視点.1]山間地の共同宅配的なことは農協や郵便ルートなどを用いて昔から行われてきた。しかし、個々の事業の採算性だけを考えれば(郵政民営化を待つまでもなく)否定的な展望しか出てこない。過疎地の高齢化対策などは深刻な課題である
[視点.2]過疎地のDOSAモデルと市街地・産業集積地、あるいは住宅地域のDOSAモデルなどは、相当異なるモデルになるだろう

公的ドメインの役割
[課題提起]DOSAドメインが需要のコントロールを担うことになると、社会主義のような「計画経済」の轍を踏むことになるのではないか
[視点.1]DOSAドメインはあくまで地域に対する自由競争環境下で構築され運営されるべき「ビジネスモデル」である。そのために、特に自治体を中心とする地域のインフラ整備やナレッジマネジメントを担うべき公的ドメインのレイヤーとの機能分担などの、フレームワーク作りが今後重要となるだろう
[視点.2]中央主導の画一モデルではなく、自治体や地域の独自性・将来展望が活かせるようなモデル作りが重要であろう

新しいパラダイム
[課題提起]所謂「SCM」という枠組みとは異なるパラダイム、取り組み方が必要ではないか。また、学会運営上も「何でもかんでもSCM」というのも困る
[視点.1]確かに、「需要側のディマンドオリエンデドなサプライ(ネットワーク)マネジメント」であり、「サプライ(プロセス)チェーン・マネジメント」では一面的な取り組みを指すことになるのかも知れない。皆さんとコンセプトを発展させ確立していきたい
[視点.2]他方、「SCM」を単なる「サプライヤー側の効率化運動」と捉えるべきではない。機能や企業をまたがるサプライチェーンを通して要求されるのは「顧客満足」であり、最終的には「最終消費者」=「住民生活」の満足度向上でなければならない(競争優位に立てない)。またDOSA側からも、「サプライネットワーク」マネジメントに個々のサプライチェーンが対応できるマネジメント力を持つ事を要求するようになるだろう。従って、DOSAとSCMには不可分の要素もある

(以上)