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地域市場創造と日本型e環境
=21世紀型、住民指向型、新SCMドメインフレームワークの提案=
2001年3月
褐o営資源システム研究所 取締役研究開発部長 梅澤伊憲
本論は、“SCMリサーチレビュー誌/第9号”の巻頭言として執筆したもの、および、平成12年度「機械工業経済研究報告書」に発表する予稿の一部に手を加えたものです。
Supply Chain
Managementの領域も、eコマース、eビジネス、eマーケットプレイス、等々・・・、何にでも「e」が付く多様でグローバルな展開を見せるビジネスの可能性の中で、プレーヤー(登場人物)、イニシャチブ(主導力)、ソリューション(解決策・実現手段)が大きく変化しつつある。Supply Chain Councilも昨年のシカゴ大会以降「eSCM」だし、「eSCOR」等も喧伝され始めた。
このような欧米の潮流の中で、日本の流通、特に末端の住民との接点である小売業界はどうなっていくのか。これらを既存の小売業種の育成や地域振興に回帰してしまうのではなく、これからのe環境を展望する中で捉えなおそうと考えた。キーワードは以下である。「地域」、「住民と消費者」、「真のディマンド」、「eビジネスからe環境へ」・・・これらから、DOSA(Demand Oriented Small area e-environment ArchitectureまたはDomain
Of Small Area)のコンセプトを提案する。
eマーケットプレイス、特にeプロキュアメントのすさまじいまでの進展や、QR、ECRの流れが結実しつつあるCPFRイニシャチブ等は、正しく米国的グローバル化SCMの典型として日本市場でも受け皿作りが様々に問われ、進められている。また、大手のメーカーやサービス業主導のネットサービスによる顧客囲い込みの動きが無数に生まれつつあり、「この乱立状態は早晩少数の巨大グループによって寡占市場に再編される」という米国流のシナリオが日本でも成り立つのかどうかが、中小、特に地方の企業や小売店舗の関心や懸念の俎上にのぼり始めた。
昨年末に、全国至るところに存在する「商店街」に関する現状や課題について、関係各方面のお話しを伺うことができた。「商店街」の定義も様々あるようだが、ここでは「小売店舗や飲食店が、ある程度地域的に集積している商業経済の(ゆるい)単位」位にしておこう(全国商店街振興組合連合会の加盟資格を有する「商店街」は全国に2,600を数え、加入店舗数は15万店を越す(全振連より)。この中には所謂「ショッピングセンター」などは含まれず、集積度が低く組織化されない店舗の数はその十倍にのぼるという)。これらが前述のグローバルなe市場環境の波にさらされるとどうなっていくだろうか。
[図1]商店街を取り巻くeイニシャチブ

2.既存の地域小売店舗とeイニシャチブ
既存の「商店街」を構成する店舗や夫々のビジネスモデルからは、周辺のe環境の進展に伴う様々な課題が見えてくる。
[図2]商店街から見たeイニシャチブの問題点

(1)大企業中心に進められてきた既存のB2R(メーカーや流通:小売)
・既存のEDIの普及、展開の頭打ち
・部分的な効果、優位性
(2)eマーケットプレイスの主体(メーカー、流通、3rdパーティー:消費者)
・物流、リアル物販、リアルサービスと商流の乖離
・信用供与、代引き決済、地域性の崩壊
(3)公共サービス、業務等のG2C(行政、自治体:住民、・・・)
・過疎化、住民とサプライヤーの分離
・商店街、リアルコミュニティの崩壊(人口、文化)
(4)21世紀に解決が迫られる新たな課題
・産業廃棄、リサイクル、交通問題、公害問題
・医療、介護、福祉、・・・
店舗の視点から見た予測の中でも悲観的なものは、全国集中の大手メーカー、全国流通ネットワークおよび、これらとタイアップして台頭してくる3rdパーティー(ITE:Internet Trading Exchanges)によって全国均質サービスが実現する傍ら、消費者に近接した小売店舗はその役割・価値を失っていくというものである。さらに「商店街」を形成している小売店舗は、少数のデパート、スーパー、代理店のような大規模店や系列店舗と、その他の中小店舗に分類される。この内、EDIや自動補充方式などの既存のB2B環境を通して大手のサプライヤー側主導のSCMに組み込まれているのは、少数だが取引高の多くを占めている大規模店や系列店である。圧倒的多数の中小小売店舗はEDIによる受発注すら適用できおらず、集客力の落ちた商店街でリアルビジネスだけを武器にしていては、情報や付帯する顧客(消費者)サービス面で勝てない、というのだ。
[図3]小売店舗の視点からの問題点

3.これからの地域市場とR2C
では、サプライヤーや小売店の立場を離れて「最終消費者=地域住民」の視点から見た、これからのe環境に求められる要件は何か。SCMの論議が巻き起こった当初から、サプライチェーン運営の価値基準の究極は「顧客満足」にあるべきことが指摘されてきた。サプライチェーンを構成する企業間やステイクホルダー間をコラボレーションさせる共通の目標は「顧客満足」に求めるしかないからである。
それは「2C(toC)」ではなくて「fromC」の視点であろう。この観点からのアプローチの一つに、(財)店舗システム協会などが推進するODRS(オンディマンド・リテール・ソリューションズ)の活動と小売店向けISPサービスなどがあげられよう。また、前述のサプライヤー・大手流通中心の取り組みも、CS(顧客満足)が競争の主要件となる今後の市場においては急速にディマンド指向型のサプライチェーン形成へと向かう事は間違いない。
しかし、このような集中サービス指向だけでは、物の消費やリアルなサービスの実態が存在する「地域」の特徴や個性に対応しそれを助長させることには早晩行き詰まりを来たすだろう。
地域の消費者中心の要件試行に必要なことは、バーティカル(業種別)のポータルが無数に乱立している状態でもなく、今後一層分権化され民営化されていく公的サービスとビジネス要件との間に厚い仕切りを存続させることでもなく、ましてや地域の個性を不必要に失ってしまう「グローバル化」でもない。すなわち、以下のようなことが求められてくるのではないか。
@住民の、多様なディマンドに幅広く対応
A官業と民業が融合した住民指向サービス体系
Bグローバル(ナショナル)ブランドへの使い易い仲介機能
しかも、ここでいう「住民」とは、サプライヤーからみた「消費者」の位置付けだけではなく、同時に地域性、直接性を伴った製品やサービスの「サプライヤー」でもあり得るのである。従って、ここでは「環境」、「交通」、「福祉」、「医療」、「介護」などの諸課題も住民の日常課題に直結するものとして捉えられていく必要があろう。「住民」指向型で今後のe環境を考えると、従来型のe環境に乗っかる特定の製品なりサービスなりを中心とする「ビジネスモデル」から、より広範な「e環境モデル」への展開が垣間見えてくる。

[図4]ビジネスモデルから地域e環境モデル(DOSA)へ
<以下、順次掲載予定>